男性と女性の薄毛・脱毛は…
同じ薄毛・脱毛と言っても男性と女性ではその原因や治療法が異なります。ここでは男性と女性を分けて解説します。
男性の薄毛(男性型脱毛症/AGA:Androgenetic alopecia)
男性型の脱毛症は壮年性脱毛症とも呼ばれます。思春期以降に始まり、徐々に進行し前頭部と頭頂部の頭髪が薄くなり脱毛が進行します。その過程で毛は細く短くなるのも特徴です。また、後頭部と側頭部の頭髪の変化はほとんどありません。
男性型脱毛症の原因
①男性型脱毛症のヘアサイクル(毛周期)
毛周期は細胞増殖や分化が盛んな成長期に始まります。その後、毛母の細胞分裂が停止して細胞数が減少し組織自体が退縮していく退行期に入ります。その後、毛の成長は完全に停止し、毛根は休眠状態(休止期)に入ります。しばらくすると次の新たな成長期が始まり古い毛髪は押し出されて抜けていきます。この繰り返しをヘアサイクル(毛周期)と言います。 正常な状態では成長期の期間は2~6年ですが、男性型脱毛症では数カ月~1年と短くなるため、健康な毛髪(太く色も濃く、コシのある毛:硬毛)に成長する筈だった毛髪は薄毛が進行しミニチュア化(細くて色も薄く、弱々しい毛:軟毛)していきます。 細くて色も薄く、弱々しい毛が多くなり薄毛、脱毛が進行していきます。
②成長期が短くなる原因
男性型脱毛症の脱毛部では高濃度のジヒドロテストステロン(DHT)という成分が見られ、これにより発毛のサイクルが短くなり、成長期もそれによって短くなります。 DHTは、男性ホルモンであるテストステロンが、5α還元酵素という酵素によって変換された物質で男性ホルモンの一つです。(テストステロンは、男性はもちろん、女性にも少量は分泌されているホルモンです。) DHTは毛乳頭にある男性ホルモンレセプターと結合して脱毛因子と言われるTGF-βを増やします。このTGF-βが毛乳頭や毛母細胞へ成長期から退行期・休止期に移行するように指令を出します。その結果、成長期を短くし薄毛や脱毛を進行させます。 ジヒドロテストステロンが過剰となったとき、男性は薄毛や脱毛、前立せん肥大、無駄毛の増殖、皮脂の分泌増加が起こります。中年以降の男性に多くみられる症状です。
男性ホルモン
男性ホルモンのテストステロンは、筋肉を発達させたり、体毛を増やしたり濃くしたり、また、性欲を高めたり皮脂の分泌を促したりするホルモンで、これ自体が直接、男性型脱毛症の原因とはなりません。この男性ホルモン(テストステロン)が、人体に存在する酵素の一種である「5α還元酵素」 という酵素と結びつくことで、毛髪を生み出す毛母細胞を萎縮させるDHTに変化します。 「5α還元酵素」にはⅠ型とⅡ型の2つあります。
■Ⅰ型5α還元酵素 Ⅰ型5α還元酵素は全身に分布します。Ⅰ型は皮脂腺に多く存在しているため、皮脂の分泌が多く脂っぽい人は、Ⅰ型5α還元酵素の分泌が多いと言えます。 ■Ⅱ型5α還元酵素 Ⅱ型5α還元酵素は前頭部・頭頂部の毛乳頭や前立腺に多く分布します。Ⅱ型5α還元酵素は特に前頭部や頭頂部に多いため、AGAの症状である前頭部や頭頂部の薄毛や脱毛の原因となります。
男性型脱毛症の治療・ケア
DHTの量を押さえれば、薄毛や脱毛の予防や治療に繋がります。
①治療
本的に男性型脱毛症は何もしない状態では、薄毛・脱毛は進行します。ヘアサイクルの短くなった成長期を延長させることです。
①最も効果的な治療は薄毛・脱毛部位のDHTの量を減らすことです。 プロペシア(フェナステリド)、ザガーロ(デュタステリド)は、男性型脱毛症の内服の治療薬(医師の処方薬)として承認※されています。※自費診療 これらの薬剤は、Ⅱ型5α還元酵素を阻害しDHTの産生を抑制します。もともとは男性の前立腺肥大症の治療薬として開発された薬ですが、男性型の脱毛症にも有効であることが分かり処方薬として承認されました。 ※前述の通りⅡ型5α還元酵素は、前立腺や前頭部・頭頂部の多く存在するため効率的に治療ができるわけです。